【wahnsinnig】

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Trick or Treat!

「イールカせーんせ。こ~んばんは~」
「…カカシさん」
 10月も終わりが近づいて来たある日の事。
 カカシはいつものように窓からイルカ宅へ上がり込んでいた。
 小脇にサンダルを抱えてにこやかに挨拶したカカシを見たイルカは、『また来やがったのか、この野郎!窓から入るんじゃねぇっ!』という表情をしたが、一言「サンダル」と呟いてから玄関を指差し台所に引っ込んだ。
「了ー解。玄関ね」
 イルカの態度から了承を得たと判断して、カカシは足取りも軽くサンダルを玄関へ置きに行く。
 台所から何やら良い匂いが漂って来た。イルカは夕食作りの真っ最中だったようだ。
 当然、カカシは夕食もお相伴にあずかるつもりなので、玄関にサンダルを置くといそいそと居間へ向かった。
 最初こそカカシの行動にあれこれ文句を言っていたイルカだったが、最近は何を言っても無駄だと理解したのか、はたまた諦めたのか、――多分後者だと思うが――不機嫌な顔ではあったけれど多少のことであれば何も言わずに受け入れるようになっていた。
「教育の賜物だ~ね」
 イルカが聞いたら即刻否定して反論するような台詞をのたまいながら、機嫌良く居間へ足を踏み入れたカカシは、思わず足を止めてじっと部屋の真ん中を凝視した。
 玄関へ行く時はイルカの陰になって気付かなかったが、居間の中央に置かれた卓袱台の上に、鮮やかなオレンジ色の物体が鎮座している。
「…かぼちゃ?」
 人間の頭より一回り大きなそれは、木の葉の里では見掛けない種類のかぼちゃだった。
 よく見ると中身はくり抜かれ、眼と口らしき穴が彫られている。
 持ち上げると結構重い。
「ジャックオーランタンだっけ?もう、そんな季節か」
 クリスマスほどではないが、ハロウィンも子供のお祭りとして木の葉の里に定着しつつあった。
 どうやらこのかぼちゃの置き物は、イルカがハロウィン用に作ったもののようだ。
 よくよくイベント事が好きらしい。
「可愛いもんだねぇ」
 微笑ましく思っているカカシは知らないが、昨年アカデミーの一部の子供達が派手な悪戯をやらかして、一般の里の者から苦情が来てしまったために今年はアカデミーでパーティーを主催するということで落ち着いたのだ。
 イルカ達教師はただでさえ忙しいのに、余計な仕事が増えてしまって不満たらたらなのである。

「あ、カカシさん。それ壊さないで下さいよ」
 皿を持ったイルカが慌ててカカシからかぼちゃを取り上げる。
「ねえ、それってハロウィン用のかぼちゃ?見掛けない品種だよね」
「そうです。ハロウィン用に栽培されてるらしいですよ。これは八百屋で売ってたんですけど、園芸店にも売ってるみたいです」
「へぇ~」
 イルカの説明に頷きながらも、カカシの思考は既にイチャパラの世界へと妄想の羽根を広げていた。

 悪戯かお菓子か――。

(そりゃあ、当然、悪戯デショ)
 今日はハロウィン当日ではないが、軽くイルカの身体に悪戯するぐらいなら大丈夫なのではないか?そんなことを考えながら、カカシはイルカの身体のラインを視線でなぞる。
 行為を始めてしまえば軽くじゃ済まないであろうが、優しくするのは吝かではない。
 一度強姦まがいに抱いてしまったため、イルカのガードが固くて警戒心を解すためにも手を出すのは控えていたカカシだったが、さすがにそろそろ限界だ。
 何しろ性欲処理でも浮気と考える相手なので、カカシは2カ月近くも禁欲生活を余儀なくされていた。
 我ながら良く我慢したものだと思う。
「硬いかと思ったら、意外と中は柔らかかったんですよ」
(イルカ先生の中も柔らかかったよねぇ~。入口は硬かったけど)
 カカシが勝手に妄想を膨らませているとは露ほども思わないイルカは、かぼちゃを片手にランタン作りの説明を続ける。
 何だかんだ言っても、イルカはこういう手作業ものが好きなのだ。
「専用の道具があるらしいんですが、やっぱり使い慣れたクナイでやる方が楽ですね。掻き出すのは大変だったけど」
 ニコニコと嬉しそうに話すイルカは大層可愛らしい。
(道具で慣らすのもいいかもね。クナイの柄とか使えそうだなぁ~)
「……カカシさん?」
 じっと見詰め続けるカカシを不思議そうに見上げたイルカの頬がひくりと引き攣る。
「あっ!そうだ!メシ!夕メシが冷めちまう!早く食べましょうっ!!」
 カカシが一歩近付くより先に、イルカは踵を返して台所に駆け込む。
「……ちっ、逃げたか…」
 狭い部屋なのでイルカを捕えるのは容易いが、イルカ手製の夕食も魅力的だ。
 まずは食欲を満たすことに決めて、カカシは畳に腰を下ろす。
 それにしても、ゆるゆるだったイルカの危機察知能力は、カカシのお陰で格段に向上したようだ。
「でも、まあ家に上げちゃった時点で駄目でしょ」
 真摯な態度で誠意を見せ続けた男の中身は、イルカと出会った頃から何一つ変わってない。 
 イルカが怯えるので大人しくしていただけで、ケダモノは所詮、ケダモノだ。
「俺は、ヤる時はヤる男よ?」
 そう一人ごちると、カカシは台所でどうやって逃げ出そうかと頭を抱えるイルカを尻目に、食後の甘いお菓子に思いを馳せるのだった。


終わる


『Happy Halloween!』

+++++

イルカ先生、逃げてー!
自分ちなのに逃げる中忍先生www

  • 2009/10/31 (土) 16:11
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