※悪い男 4 (終)
ゆるやかといっても、イルカに伝わる衝撃は酷いもので、力の入らない両手で必死にカカシを止めようとした。
「あ、むりっ…、やだ……カカシさん」
思うように動かせず、逆に縋るようにカカシの腕を掴む。
「こっち触ってあげる」
前を握られ何度か扱かれると、身体が勝手にびくびくと反応する。
「や、…そこ駄目っ。…あっ、…いや、だ…っ」
「駄目じゃないでしょ、…気持ちイイくせに…」
「っ…違う、…やだ、こんなのっ……」
「……アンタ、ホント…エロイなぁ」
カカシの動きも早くなり、イルカはされるがままの状態で揺さぶられ、泣きながら喘ぐしか出来なかった。
「ね、約束して」
「…あ、…なに…、やあ、も…くるし…」
「もっと、警戒して…」
「…あ…?…あ、んっ…」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってるであろうイルカの顔をカカシがべろりと舌で舐めとる。
「アンタは、もう俺のなんだから。俺以外の奴らには触らせちゃ駄目」
いいね、と言ってイルカのどろどろになった性器の先端を親指で弄くる。
「うあっ…や、やめて」
「イキたい?だったら、頷いて」
「んっ、…んっ」
訳も分からず首を縦に振ると、前と後ろの動きが激しくなり、強く抱き竦められる。
酷いことをされていると思うのに、首筋に当たる熱い吐息と、まるで縋ってるかのような腕の強さを感じて、甘い、不可思議な気持ちが湧き上がって来る。
「カカ、シ…さ…、…あっ」
「イルカ…ッ」
名前を呼ばれ、身体の奥深くに熱い塊を叩き込まれて、イルカはとうとう意識を手放した。
*****
「イールカせーんせ。はい、プレゼント」
イルカの自宅に来るなり、カカシは四角い箱を差し出しにっこりと微笑む。
「え?俺にですか?」
「そ、クリスマスプレゼント」
「わぁ、嬉しいです」
あれから一年。
身体から始まった関係だったが、紆余曲折を経てイルカはカカシと正式に付き合うようになっていた。
流されてるなぁと思ったこともあったが、カカシ以外の男とは拒絶反応が出て普通の接触さえ出来なくなったのだから、きっと最初からカカシのことは特別で、少なからず好意を持っていたのだろう。
それに付き合い始めてから分かったことだが、カカシは意外なほど誠実で、浮気はしないし許さないといったタイプだった。
ただ、性格はかなり悪い。
「開けてもいいですか?」
「もちろん!」
ガサガサと包装紙を外して箱を開ける。
「………………」
一緒に入っていたピンク色のポーチがぽろりと床に落ちた。
「カカシさん……これって…」
「覚えてます?せんせーと初めてエッチした時に使った電動マッサージ器!」
覚えてるもなにも、これだけは記憶から抹消したいと思っていた代物だ。
強姦されたこともショックだったが、所謂大人のおもちゃを入れられ喘いだ記憶は、ふとした拍子にイルカの脳裏をよぎって大いに動揺させた。
あれは憤死ものの思い出だ。
カカシからしたら既に口で言うのも憚られるようなアレコレをしているわけだから、おもちゃを使ったことなど可愛いものという認識だ。
しかし、イルカにとってはアブノーマルな行為という位置付けで、受け入れるのはかなり難しいことだった。
そんなことを考えてるイルカの横で、カカシは上機嫌な様子で話を続ける。
「しかも、コレあの時のやつですよ。懐かしいでしょ」
「………え?」
「記念に拾っておいたんですよねー」
「えええっ!?」
「あ、ちゃんと洗ってあるから綺麗ですよ。やー、あの時は燃えましたよねぇ~」
しみじみとそんなことを語るカカシの横で、イルカは固まったまま動けない。
「ね、イルカせんせ…。今夜、どうですか?久しぶりに使ってみようか…」
腰に来るような艶のある声で囁かれ、イルカは慌てて耳を塞ぐ。
「アンタ、馬鹿ですか!?馬鹿でしょう!!俺は絶対に使いませんからね!!」
「ええ~…。折角、用意したのに~」
こんな馬鹿なことを言い出す人だと知ったのも付き合いだしてからだ。
「どうしても駄目?」
イルカの肩に腕を回し、甘えた声でねだって来るが、こういう時に甘い顔をしては駄目だと今までの経験からイルカも学習している。
「ダーメーでーす!!」
ぺちっと叩いて腕をほどくとカカシは不満そうに口を尖らす。だが、しつこく食い下がってこないところをみると、イルカの反応は予測済みだったらしい。
「ま、次の機会を待ちますか」
にやりと人の悪い笑みを浮かべてそんなことを言う。
「次の機会なんてありませんってば!ほら、ご飯食べましょう!」
赤くなった頬を誤魔化すように片手で隠し、イルカが台所へ向かおうとすれば、それを遮るみたいに回り込んだカカシが腕を掴んで覗き込んで来る。
「あれ?イルカ先生、顔赤いよ?何を想像したの?」
ニヤニヤと笑いながら訊ねるカカシは、かなりイイ性格をしていると言えよう。手には見たくもない電動マッサージ器を見せびらかすみたいに持っている。
「別に!なにも想像してません!」
イルカはムッとした顔で振り返り、カカシの手からそれを奪い取ると、窓を開けて力任せに外へ放り投げる。
「あ…、あああーっ!!」
イルカの行動は予想外だったのだろう。カカシは悲鳴を上げて窓枠にしがみ付く。
「俺の思い出が~!」
「…馬鹿ですか!」
何でこんな人を好きになったんだろうか。
だけど、悔しいかなこんな男だと分かっていても嫌いになんかなれないのだ。
こうなったらとことん付きやってやるか、と決意も新たにイルカは腕を組む。
「ほら、カカシさん」
「あてっ」
未練たらしく窓に張り付くカカシの後頭部を叩き、「ご飯、食べましょ」と言ってカカシの頬に口付ける。
驚いたように目を丸くするカカシを見上げ、イルカはしてやったりと意地悪く笑って、抱き付こうとするカカシを避けてさっさと台所に逃げ込んだ。
終
-----
2010.12.23
「TMG HYK CC企画」参加作品です。
- 2010/12/19 (日) 01:08
- 中編