秘密の相手
会議から戻ると机の上に置きっぱなしになっていた携帯電話にメールが届いていた。
「あ、また来てる」
慣れた操作でメールを開くと可愛らしい犬のキャラクターが画面に現れる。所謂デコメというやつだ。
イルカ自身はデコメなど送ったこともなければ使おうとも思わないが、見るのは別に嫌いではない。
画像を選び、あれこれ考えながら作ってると思えば可愛いものだ。今日のはいつも使ってる犬のキャラクターが下駄占いをしている画像だった。
「どした?イルカ」
隣の席のコテツが缶コーヒー片手に戻って来た。
「ああ、なんでもない」
ぱちんと携帯を閉じてポケットに仕舞うと、コテツは意味深に笑う。
「また例のメールが来てたんだろ?」
苦笑するイルカの反応から肯定と受け取ったのだろう。コテツは呆れたような表情で良く続くよなぁと呟いた。
確かに、と思って数えるとメールのやり取りを始めて既に3ヶ月が経とうとしていた。切欠は相手の宛先間違いだったが、未だに他愛もないメールを続けている。
「相手が女子高生だからって顔も分からないのに良く続けるな」
「ばーか。女子高生じゃないよ」
「え?じゃあ女子大生?」
「女子大生でもないし、中学生でもないよ」
先回りして否定すると、「まさか、おばちゃんとか?そりゃないわー」と尚も騒ぐコテツに辟易していたら、背後からぽこんと頭を叩かれた。
「なーに、さぼってんの」
「はたけ主任!」
慌てて机に向かうコテツを確認して、主任と呼ばれた男はイルカの耳元に唇を寄せる。
「メール見た?」
小さな囁きにこくりと頷く。
この男がデコメの相手だとは誰も想像しないだろう。
赤くなった耳を片手で隠し、イルカは機嫌良さそうに立ち去る男を睨み付けた。
終
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『「像」「下駄」「デコメ」の3つの言葉を含め、5ツイート以内でオチのある話を書きなさい』
というお題でした。
無理やり5ツイート内で収めてみましたwww
- 2011/02/21 (月) 02:17
- ツイッターお題